Photography

The Art of Living

島と、呼吸と。

先月 、 大切な友人が死んだ。
彼女がいなかったら、私の人生はどうなっていたんだろうと思うほど、大きな存在だったと思う。
母くらいの年で、いつもニコニコしていて、ほがらかで、不平不満など一度も聞いたことがない。


私生活のことは、息子さんと、そのお嫁さん、そしてお孫さんがいることと、
そして、彼女の仕事のみ。
その他に、たとえば彼女がどんな部屋に住んでいて、どんな音楽が好きで、 どんな旦那さんがいたのか(離婚したとは風の噂で聞いた)、そして友人たちとどんな話をしていたのか、さっぱり検討もつかない。それくらい、自分のことはあまり話さない人だった。


でもいつも私の話を聞いて、確実なアドバイスをくれ、ときにはその言葉で、涙が止まらなくなることもあった。
それは決して厳しい言葉ではなく、慈悲深く、まるで彼女の背中には天使の翼があるのではないかと想うほど、大きな包容力が伴っていた。丸みのある彼女の身体で、ときどきぎゅっと抱きしめられるような錯覚を起こすことすらあった。
今思い返してみると、彼女のような人は非常に稀だったのだろう。
まわりを見渡すと、自分を含め、自分のことを知ってほしい人たちが溢れ返っている。
ソーシャルメディアの中でも、電話で話しても、女友達とブランチへ行っても、常に私たちは自分のことが中心で、それを確実に伝える方法ばかり躍起になっている。

「呼吸をちゃんとすること」

口を動かしてばかりの私たちは、ときどき深い呼吸を忘れてしまうほどだ。
彼女はときどきこう言って、私に思い出させてくれた。
そのたびに見えない空気を思い切り体に吸い込み、何かが満たされたような気持ちになる。
彼女はやっぱりいつもニコニコ微笑んでいる。どんなときも。


南国へいく飛行機の中で、彼女は意識を失った。
ワインを一杯飲んで、目が覚めたときには島へ到着しているだろう、
彼女はきっとそう思って、目を瞑り、でも、
二度と目が覚めなかった彼女の顔は、やっぱりきっと、微笑んでいたはずだ。


由巳さん、ありがとう。
そして安らかにお眠りください。